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残業代 請求

残業代請求に必要な証拠について

残業代とは、法定労働時間(週40時間または1日8時間)を超えて働いた場合、その超えた部分について、請求することができる割増賃金のことをいいます。
残業代を請求するためには、以下の点を労働者が証拠に基づいて、証明しなければなりません。

  • ・法定労働時間を超えた事実
  • ・契約内容に沿った割増賃金が支払われていない事実

法定労働時間を超えた事実を証明する

(1)タイムカード

・可能であればコピーや撮影をする

労働した時間を示す証拠の中で最も有力なものは、タイムカードです。これらを閲覧できる状態であればコピーや写真に撮っておきましょう。

・労基署や弁護士に相談

会社が何かと理由をつけて開示に応じない場合には、労基署や弁護士に相談する方法があります。労働安全衛生法の改正により、2019年4月から、会社には高度プロフェッショナル制度の対象者以外のすべての労働者の労働時間を把握するという義務が課せられましたが、労働者からの開示要求に対して応じなければならないという義務はなく、開示しないことは直ちに違法とはいえません。
しかし、大正会事件判決(大阪地方裁判所平成22年7月5日)では,会社には信義則上労働契約に付随する義務として、労働者にタイムカードの打刻を適正に行わせる義務、およびタイムカードを開示する義務があるとしています。

このような判例の動向を踏まえた労働問題の専門家である労基署や弁護士から問題点を指摘された使用者は、その後の社会的不利益や訴訟の可能性を考え、開示に応じることがあります。

(2)会社が頑なにタイムカードを開示しない場合

労基署や弁護士からの指摘にも拘わらず、使用者が頑なにタイムカードを開示しないことがあります。そのような場合に利用できるものとして「証拠保全手続き」があります。
証拠保全手続きとは、訴訟を提起する前に必要な証拠を確保しておくための裁判手続きです。強制力はありませんが、正当な理由なく拒否すると20万円以下の過料が課せられるうえに、その後の裁判で不利に扱われるおそれがあるため、たいていの使用者は開示に応じます。

(3)タイムカードがない場合

そもそもタイムカード制を導入していない場合であっても、残業代請求を諦める必要はありません。
タイムカード以外でも次の証拠で労働時間を立証できます。

  • ・業務日報
  • ・勤怠記録
  • ・勤務シフト表
  • ・パソコンのログイン・ログオフ記録
  • ・メールの送受信記録
  • ・鉄道ICカードの通過履歴
  • ・自身で作成したメモ など

これらのうち特に労働者自らが作成したメモについては注意が必要です。裁判で証拠として採用されるためには、裁判官を納得させられるだけの客観性が要求され、随意に抽象的に書いているだけでは不十分です。毎日機械的に記録しており、しかも詳細でかつ具体的に記載されていることが必要です。
このように、労働時間を証明する証拠はタイムカード以外にもたくさんあります。実際に何が証拠となるかは業務形態や事案によっても異なるので、あらかじめ弁護士に相談するのがよいでしょう。

契約内容に沿って割増賃金が支払われていない事実を証明する

請求の対象となる期間の賃金を確定するために、以下の証拠が必要です。
まず、給与の計算方法や残業の扱いについて記載された「雇用通知書」や「雇用契約書」などの書類、就業時間や時間外労働に関する規定がある「就業規則」のコピーが必要です。これらに基づいて本来支払われるべき金額を算出します。
そして、実際に支払われた賃金との差額を明らかにするために「給与明細」や「預金通帳」も必要です。

証拠収集後の進め方

これらの証拠が揃ったら、残業代支払依頼書を作成して内容証明郵便で会社に送付します。送達後、会社との交渉となりますが、労働者自身だけで交渉にのぞむことはおすすめしません。残業代を正確に管理・支払いを行わない会社が、労働者と真摯に話し合うことは期待できないからです。また、2020年3月よりも前に生じた残業代は2年の消滅時効にかかります。法的知識がなく証拠も不十分な状態で交渉を重ねていると、時効期間が満了して請求できなくなってしまいかねません。さらに、会社に居づらくなるというリスクもあります。
早期に円満解決を図るには労働問題に詳しい弁護士に依頼することをおすすめします。