セクハラ・パワハラ
定義と判断基準
(1)セクハラ
セクハラとは、セクシャルハラスメントの略で、相手が望んでおらず不快感を与える性的な言動すべてをいいます。
- (例)
- ・執拗にデートに誘ったり、出張に同伴させようとしたりする
- ・容姿や身体的特徴について話題にする
- ・不快な性的言動を拒絶あるいは中止を求めたところ、異動を命じられた
判断基準
相手が望んでいない身体的接触によって強い不快感を持った場合には、それだけでセクハラにあたります。接触はないが性的な会話やふるまいについては、明確に抗議しているのに改善されない場合、あるいは、被害者の心身に重大な影響が生じている場合には、セクハラになります。
注意すべきは、被害を受けた側の主観や状況によって認定されることです。行為者側に性的意図があったかどうかは関係ありません。
(2)パワハラ
パワハラとは、パワーハラスメントの略で、職場における力関係を背景としたいじめのことをいいます。
加害者に役職の上位性が認められることが一般的ですが、同じ役職であっても、勤続年数や職場内での人間関係など相手よりも有利な立場を利用して肉体的精神的苦痛を与える行為もパワハラにあたります。
- (例)
- ・「バカ」「使えねえな」と罵倒して、尻を蹴ったり頭や頬を叩いたりする
- ・業務と無関係な草むしり、ごみ拾いなどを業務命令で行わせる
- ・達成不可能なノルマを課し、それが達成できないと「給料泥棒」と罵声を浴びせる
判断基準
会社では業務を円滑に行うため、管理職には各種権限が認められており、必要に応じて部下などに対して指導を行うことがあります。この指導が本来の業務を超えて弱い立場の労働者に継続的に行われた結果、被害労働者のみならず他の労働者も不快な思いをして本来の能力が発揮できないなど働く環境を悪化させた場合や、「次の標的は自分では」と委縮させ雇用不安をもたらす場合にはパワハラに該当します。
ここでも加害者の意図ではなく、被害労働者や他の労働者といった受け手側の主観や事情を中心に判断されます。
問題点
セクハラもパワハラも、被害者は「雇用されている」という弱い立場から我慢を強いられる点に大きな問題があります。「セクハラを告発したら暴行を受けた」「長時間労働を強いられており、異議を唱えたら皆の前で罵倒された」などのように被害は単一ではなく、セクハラ・パワハラ・長時間労働・残業代未払いといったさまざまな問題が複雑に絡み合っており、被害者としても何をどう対処すればよいのかわからないことが事態を難しくしてるようです。
さらに二次被害も深刻です。二次被害とは、セクハラやパワハラを相談した相手に「あなたにも落ち度がある」と責められたり、被害の事実を周囲に言いふらされたりすることです。阻止するためには信頼できる相談先を探すことが重要です。
対処法
セクハラ・パワハラの被害に遭った場合には、被害を止める方法と法的責任を追及する方法があります。
(1)被害を止める方法
現在職場で行われているいやがらせ行為を直ちに止めるための仮処分命令を裁判所で出してもらうことができます。
また、会社が合理的な理由なく被害労働者を解雇することは違法であり、給料の一方的な減額や、不利益な異動命令も違法です。このような場合には、解雇や異動命令の無効を争い、差額の賃金支払請求が可能です。
(2)法的責任の追及
①刑事責任
セクハラ行為は、強制わいせつ罪などの成立、軽犯罪法、迷惑防止条例、ストーカー規制法などの規制対象となります。
パワハラ行為は、暴行罪、脅迫罪、傷害罪、名誉棄損罪、侮辱罪が成立する可能性があります。
セクハラ・パワハラともに、執拗な嫌がらせによって被害者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)などを発症した場合には傷害罪が成立する場合もあります。
いずれも捜査機関に告訴や被害届を提出して、処罰を求めることになります。
②民事責任
セクハラ・パワハラの加害者本人には不法行為責任として損害賠償を請求できます。これと併せて、加害行為を放置した会社に対しては使用者責任を追及することもできます。
さらに会社に対しては、働きやすい職場環境を保つことを怠ったことを理由に安全配慮義務違反として、労働契約上の責任追及も可能です。
証拠の重要性
セクハラ・パワハラ行為の中止や損害賠償として慰謝料を請求するにしても、これらの行為に違法性があることを示す証拠が不可欠です。たとえば、上司との会話の録音、医師の診断書、職場の人の証言などです。
ただし、一回きりの事実では証拠として不十分であり、いつ、だれが、どんな行為をしたかという時系列に沿った事実が長期的に記録されているものが望ましいです。ハラスメントが行われた早期の段階でどのような証拠が必要であるかについて専門家からアドバイスを受けるのが賢明でしょう。
まとめ
セクハラ・パワハラ行為でお悩みの方は弁護士にご相談ください。秘密は厳守の上、法的措置はもちろん、訴訟外で会社と交渉してハラスメントをやめさせることもできます。弁護士であれば、良好に改善された職場環境に復帰するお手伝いも可能なのです。