リストラと解雇の違いについて
リストラとは
日本においては、リストラと聞くと解雇と印象づけられますが、正確には、「リストラ=解雇」ではありません。
リストラとは、リストラクチャリングの略称で、「再構築」という意味です。つまり、低迷する収益の立て直しを目的とした合理化策のみならず、成長部門の強化を目的とする人事異動や設備投資、組織活性化のための人員整理なども含まれるのです。このため、業績が悪化した会社だけではなく、好調な会社でもリストラは行われます。
会社の都合で行われる整理解雇もリストラの一つですが、リストラの他の方法と比べると解雇される労働者に重大な影響を及ぼすため、「リストラ=解雇」という印象が独り歩きしているのでしょう。
では、リストラとして一般的に用いられる手法と、その中でも特に人員削減を目的とした手法について詳しく見ていきます。
リストラの手法
会社の再構築、つまりリストラの手法としては、一般的に以下のものがあります。
- ・会社の組織再編
会社の不採算部門を切り離すために会社分割をしたり、親会社が経営再建ために業績の悪い子会社の株式を売却したりして、業績好調の部門だけを残し事業の効率化を図ります。 - ・資産内容の見直し
固定資産税がかかるだけで何ら利益を生じない遊休土地、テナント数が少なく収益が上がらない商業ビル、ほとんど稼働していない工場などを売却して、それらの売却代金を設備投資にあてるなどして最新の技術を導入します。 - ・固定経費の削減
光熱費、輸送方法、人件費などの見直し、そして人員削減があります。
人件費の見直しには、労働時間の削減やワークシェアリングの導入、給料・ボーナスカット、異動・降格・配置転換などがあります。
人員削減の手法
人員削減は経費削減の最たるものですが、その方法としては解雇と退職があります。
(1)解雇
解雇とは、使用者である会社から一方的に雇用契約終了させられることをいいます。解雇には、整理解雇・普通解雇・懲戒解雇の三種類があり、リストラの手法として用いられるのが整理解雇です。
整理解雇
整理解雇は、経営不振による会社再建のための人員削減です。
使用者側の都合で一方的に労働者の収入源を絶つものであることから、整理解雇には正当理由が必要です。正当かどうかは、以下の事情をもとに判断されます。
- ①人員削減の必要性があること
整理解雇をしないと会社が倒産するような状態である場合です。 - ②解雇回避の努力をしたこと
整理解雇の前提として、役員報酬カット、新規採用停止、希望退職募集、配転、出向などを実施することが必要です。 - ③人選基準の合理性があること
勤務成績、年齢、雇用形態など、合理的な基準によって行われなければなりません。 - ④十分な説明、協議があったこと
労働者、労働組合に対して、経営上状況や整理解雇の必要性と内容について説明し、十分に話し合いが行われる必要があります。
これらのうち1つでも欠いた場合には、解雇は無効となります。
(2)退職
リストラの手法として用いられる退職制度には、希望退職と早期退職があります。
希望退職
希望退職とは、会社が条件を示して労働者の任意による退職を募ることです。
早期退職
早期退職とは、定年を迎える前に会社を退職することです。
いずれも労働契約の合意解約であり、労働者の自由な意思に基づく必要があります。このため、単なる退職の勧めである「退職勧奨」を超えて、執拗に退職を求めたり、応じない場合に不利益人事を行ったりしたときには「退職強要」とみなされ、退職の無効や損害賠償請求の根拠にもなります。
まとめ
会社としては、本来のリストラには様々な方法があるにも関わらず、その中でも最も安易で経費削減に即効性がある解雇や退職勧奨という手法をとる例が多く見られます。しかし、安易な解雇や退職による人員削減は残った労働者のモチベーションを下げることにもなり、会社にとっての長期的な経営改善には向きません。また、リストラに遭った労働者においても、納得できない場合は、その不当性を主張する必要があります。
リストラをめぐるトラブルにお困りの方は、一度弁護士にご相談ください。